生成AIを活用して学習プリントを作成する

学校現場では、限られた時間の中で分かりやすい学習プリントを作成することが求められています。とくに地理分野では、県名や地名、地形、産業など覚えるべき内容が多く、教師の作業負担も大きくなりがちです。そこで役立つのが生成AIです。短い時間で必要なポイントを整理し、児童の理解を助けるプリントを効率よく作成できます。

今回の範囲とキーワード

今回は、小学校高学年向けの日本の地理「中国・四国地方」に関しての範囲で、学習用プリントを作成してみます。
生成AIを授業準備のパートナーとして活用することで、より早く、質の高い教材づくりが可能になります。

キーワード

【中国地方】

  • 岡山
  • 広島
  • 山口
  • 鳥取
  • 島根(松江)

【四国地方】

  • 徳島
  • 香川(高松)
  • 愛媛(松山)
  • 高知
  • 阿波
  • 讃岐
  • 伊予
  • 土佐

1 地形

(1)山
  • 大山
  • 中国山地
  • 山陰地方
  • 山陽地方
  • 四国山地
(2)平地・河川
  • 鳥取平野
  • 岡山平野
  • 讃岐平野
  • 満濃池
  • 香川用水
  • 徳島平野
  • 高知平野
  • 促成栽培
  • ピーマン
  • なす
  • 四万十川
  • 秋吉台
  • カルスト地形
(3)島
  • 竹島
  • 小豆島
  • オリーブ

2 その他

(1)瀬戸内工業地域
  • 鉄鋼
  • 倉敷
  • 水島地区
  • セメント
  • 宇部
  • 山陽小野田
  • 埼玉
(2)本州四国連絡橋
  • 児島・坂出ルート
  • 瀬戸大橋
  • 神戸・鳴門ルート
  • 明石海峡大橋
  • 大鳴門橋
  • 尾道・今治ルート
  • 瀬戸内しまなみ海道
(3)世界遺産
  • 広島
  • 原爆ドーム
  • 厳島神社
  • 負の遺産
  • 島根
  • 石見銀山

今回は、これらのキーワードを学習範囲として、学習用プリントを生成AIを活用して作成してみます。

解説プリント

「小学校高学年向けの学習用プリントの作成をお願いします。 このプリントは、授業中に使用し、板書と合わせてキーワードを穴埋め形式で児童に埋めてもらいながら板書と並走して活用してもらうものです。 したがって、このプリントの構成も板書と合うように整理してください。 穴埋め部分は、便宜上、【 キーワード 】の形式で記してください。キーワード部分は太字にしてください。 キーワードは以下の通りです。」

とプロンプトを打ちました。使用したのはChatGPTです。
すると、下図のような出力がなされます。

この出力をワードに貼り付けたものが以下のものです。
サイズはB5、レイアウトを横向きにして2段組にしています。
ここで、生成AIの出力内容に間違いが無いか、学習用プリントとしてうまくまとまっているかなどを調整すると良いでしょう。
もちろん、最初のプロンプトを見直して、出力それ自体に修正を加える方法もあります。

ここで、最初のプロンプトの構成がどうなっているか、じっくり見てみましょう。

  1. 最初に「目的」を伝える

冒頭で
「小学校高学年向けの学習用プリントを作成したい」
という目的をはっきり示しています。目的を明確にすると、AIがどんなトーンで、どんな難易度で、何を作ればいいかを理解しやすくなります。

  1. 「利用場面」を説明する

次に、
「授業中に使う」「板書と並走して使う」
という使用シーンを説明しています。
これにより、AIは
「授業の流れに合わせたプリント」
「穴埋め形式で板書と同時に進める構成」
といった条件を理解できます。

  1. 「形式・仕様」を細かく指定する

以下のような具体的な仕様を示しています。

・穴埋めは【 キーワード 】の形にする

・キーワードは太字にする

・プリントの構成は板書と合うように整理する

こうした明確なルールがあると、AIは迷わず正確に準備できます。AIに何かを作らせるときには、
「どんな形式で」「どんな見た目で」「どんなルールで」
という仕様がとても大切です。

  1. 「必要素材(キーワード)」を提示する準備をしている

最後に、
「キーワードは以下の通りです。」
と続け、AIに必要な材料(キーワード)を渡します。
これは、AIに内容の軸を渡す重要な要素です。
プロンプトを書くときは、AIが作る内容の根拠となる素材を与えるのがポイントです。

自分でプロンプトを工夫する際は、この4つのポイントに手を入れるところから始めてみてください。

生徒用にキーワード部が空白になっているものを生成したい場合は、上図のように
「次に、先ほどの内容を、【 キーワード 】のキーワードが空白になっているバージョンも生成してください。」
と指示すれば、同様の内容でキーワードのみが空白のものが生成されます。

また、追加でプロンプトをさらに打ち込み、
「キーワードの配置をもう少し工夫して、より学びを深めることのできる構成にしてください。」
等と指示することで、異なるバージョンの出力も期待できます。

これで、少し体裁の異なる構成へと修正していくことができます。

では、他の生成AIも使ってみて、どのようになるかを見てみましょう。

Geminiの場合

Geminiは11月にアップデートが行われ、さらに性能がアップしました。
巷ではNano Banana Proという画像生成機能を用いた画像生成が人気となり、画像生成AIの活用場面が広がったことが分かります。
Nano Banana Proについては別の記事でも紹介しているので割愛するとして、Geminiで先ほどChatGPTに最初に打ち込んだプロンプトと同じプロンプトを入力しました。
すると、下図のようにGeminiではHTMLで学習プリントを作成してくれました。

右側の画面がHTMLのコードが書かれていて、画面右上の「プレビュー」をクリックすると、実際にどんな感じでプリントがHTMLで作成されているかが見れるようになります。

このような感じですね。
かなりプリントとしての完成度が高いものが、ワードを使わずに作成してくれていることが分かります。

右上の「共有」を押すと、HTMLの内容をコピーすることができます。
コピーしたコードを、PCのメモ帳などに貼り付けて、名前を付けて保存し、拡張子を.htmlに変更したうえで、ファイルを「プログラムから開く」からChromeなどのブラウザで開くと、先ほどGeminiのプレビューで表示されていた学習用プリントの内容をブラウザでも閲覧することができ、印刷やPDFへの保存も簡単に行えます。

そうして完成したプリントが以下のものです。

HTMLで出したくない場合

HTMLだとあまり扱いなれていないという人もいるかと思います。
そういう時は、「HTMLでは生成しないで」や「通常のテキストスタイルで出力して」などと依頼すれば、ChatGPTの出力のように対応してもらえます。(下図)

Claudeの場合もChatGPTと同様にテキスト形式で内容を生成してくれます。
ただし、生成内容によっては構成がシンプル過ぎてただの穴埋め問題のようになってしまう場合や、授業や宿題用プリントとしての構成上、自身の指導スタイルに合わない構成になってしまう場合なども多いかもしれません。
そういうときこそ、プロンプトの工夫が大切です。
以下に、参考となるプロンプト例を示しておきます。

1.出力を調整する「キーワード・指示例」

AIに対する指示は、具体的であるほど意図が伝わります。

目的プロンプトに加えるキーワード・指示例
形式を指定する・「B5用紙1枚に収まる分量で」
・「箇条書きを多用して」
・「表形式で整理して」
・「HTML形式ではなく、テキスト形式で」
難易度を調整する・「小学校高学年向けの言葉遣いで」
・「難しい用語には注釈をつけて」
・「児童が親しみやすいトーンで」
解答を作成する・「【 】の中が埋まっている教師用(解答入り)と、空欄の児童用の2パターンを作成して」
・「ページ下部に、選ぶための語群リスト(選択肢)を作成して」
思考を促す・「単なる暗記ではなく、『なぜそうなったか』(理由)を問う記述欄を設けて」
・「この地域の特色を一言でまとめる『まとめ』の欄を作って」

2.授業の流れに合わせる「構成・レイアウトの例」

学習のプロセスをどう設計するかをAIに伝えます。

構成パターンプロンプトでの指示内容メリット
地理の定石「『位置・地形』→『気候』→『産業(農業・工業)』→『交通・文化』の順で構成して」地理学習の基本的な思考フローに沿って整理できる。
原因と結果「自然環境(原因)と、それを利用した産業や工夫(結果)が対になるようにレイアウトして」
(例:雨が少ない → ため池が多い)
因果関係の理解を深める授業に適している。
左右対照「左側に項目名、右側にその説明と穴埋めが来る2段組みの構成を想定して記述して」ノートや板書と視覚的にリンクさせやすい。
地図活用「『地図帳で確認しよう』という作業指示アイコンを入れる場所を提案して」プリント作業だけでなく、地図帳を開くアクションを誘発できる。

3.内容を整理・修正させる「リクエスト例」

一度出力されたものがイメージと違う場合、追加で指示を出して修正(リファイン)させましょう。

  • 分量が多すぎる場合
    • 「情報量が多すぎます。重要語句(太字部分)を中心に、要点を絞って3割程度文字数を減らしてください。」
  • 項目がバラバラな場合
    • 「県ごとに箇条書きにするのではなく、『山地』『平野』『工業』といったテーマごとに情報を分類し直してください。」
  • ただの羅列に見える場合
    • 「それぞれのキーワードのつながりが分かるように、『~なので、~である』という文脈で文章をつないでください。」

忙しい教師にとって、短い準備時間で質の高い教材を作ることは大きな負担になりがちです。とくに地理分野は覚える内容が多く、プリントづくりにも時間を取られてしまいます。しかし、生成AIを活用すれば、必要なキーワード整理からプリントの骨組みづくり、空欄版の作成、構成改善までをわずかな時間で行うことができます。

今回紹介したように、
①目的を伝える
②利用場面を説明する
③形式・仕様を明確にする
④素材(キーワード)を提示する
という4つのポイントを押さえるだけで、どのAIでも安定した教材生成が可能になります。

さらに、追加で「空欄版も作って」「構成を改善して」などと指示すれば、授業スタイルや児童の実態に合わせて何度でも調整できます。生成AIは、単なる作業効率化ツールではなく、教師のアイデアを形にする“パートナー”として活用できる存在です。

ぜひ、日々の授業準備の中に生成AIを取り入れ、児童にとってわかりやすく、自分にとって負担の少ない教材づくりを実現してみてください。