ChatGPTが進化──チャットで直接アプリを操作する「Apps in ChatGPT」
2025年10月6日(米国時間)、OpenAIは新機能「Apps in ChatGPT」を発表しました。この機能により、ユーザーはチャットを通じて直接Webサービスを呼び出し、検索や作業を完結できます。従来のGPTsやプラグインは特定のタスクに特化した機能でしたが、新機能ではグラフィカルインターフェースを持つ実用的なアプリが登場し、チャット内が「アプリのプラットフォーム」へと進化します。この記事では発表内容、使い方、開発者向け情報や今後の展望を解説します。
Apps in ChatGPTとは何か?
OpenAIによると、Apps in ChatGPTは、会話の流れに沿って適切なアプリを呼び出し、チャット内でUIを提供する仕組みです。例えば「Spotify、今週金曜日のパーティー用にプレイリストを作成して」と依頼すると、ChatGPTはSpotifyへの接続許可を求め、承認後はチャット内にプレイリスト作成画面が表示されます。これは、ユーザーがブラウザや別アプリを開くことなく作業できる点が従来と大きく異なります。
利用可能なプランと対象地域
機能はChatGPTのFree、Go、Plus、Proプランで利用可能で、欧州連合(EU)を除く世界のログインユーザーが対象です。EUはAI規制やデータ保護法(GDPR)の影響を受け、現時点では利用できません。OpenAIは「近くEUでも提供する」と述べていますが、各国の法規制やプライバシー審査に対応する必要があります。日本国内でも、英語圏向けにサービスが提供されているアプリが含まれているため、アプリによっては英語設定が必要です。
使い方
アプリを利用するには、ChatGPTでアプリ名を呼び出すか、設定画面から事前に連携します。チャット欄に「Spotify 」や「Booking.com」などアプリ名+スペースを入力すると候補が表示され、初回利用時にデータ共有についての許可画面が表示されます。設定画面からは「Apps & Connectors」を開き、利用したいアプリを選んで「接続する」をクリックしますshift-ai.co.jp。連携後は具体的なプロンプトを入力することでアプリが起動し、チャット内で地図や動画などのインタラクティブなUIが利用できます。
現在利用できるアプリ:初期7社
OpenAIは初期パートナーとして7社のアプリを提供しています。いずれも旅行・学習・デザイン・不動産・音楽など日常生活に密着したサービスです。以下に簡単な特徴を示します。
- Booking.com – 宿泊施設や航空券を検索・予約でき、チャット内で条件を指定すると候補が表示されます。日本でも利用可能。
- Expedia – 海外旅行向けサービスだが、日本では現時点で利用不可。
- Canva – ブログやSNS用の画像編集が可能。英語設定が必要で、色やフォントを指定するとポスターやスライドを自動生成します。
- Figma – デザイン・ブレーンストーミング用のオンラインツール。チャット内でフローチャートやワイヤフレームを作成できます。
- Coursera – オンライン学習プラットフォーム。講義動画の視聴とともに、動画の内容をチャットで質問できます。
- Spotify – プレイリスト作成や音楽・ポッドキャストのレコメンドができる。日本では英語設定が必要。
- Zillow – 米国の不動産検索サービス。チャットで地域や価格帯を指定すると、インタラクティブな地図上に物件が表示されます。日本ではサービス自体が提供されていないため利用できません。
これらのアプリはチャットに自然に溶け込み、会話の文脈を理解して適切な結果を返してくれます。例えば家探しの話題をしていると自動的にZillowが提案される仕組みです。
今年後半に追加される予定のパートナー
OpenAIは2025年末までにさらに11社のアプリを追加する予定です。VentureBeatによると、AllTrails、Peloton、OpenTable、Target、theFork、Uberなど生活・健康・飲食・買い物系の大手企業が名を連ねています。Tom’s GuideやMacRumorsでは他にもDoorDash、Khan Academy、Instacart、Thumbtack、TripAdvisorが予定されていると報じられており、今後も多様なカテゴリが登場する見込みです。旅行やフードデリバリー、教育などさまざまなサービスが利用できるようになれば、チャット内での行動範囲はさらに広がります。
Apps SDKとModel Context Protocol
新機能を支えるのが開発者向けの「Apps SDK」です。Apps SDKは、AIモデルが外部ツールやサービスと接続するためのオープン規格「Model Context Protocol(MCP)」を拡張したもので、アプリ側のロジック部分とチャット内に表示するUIの両方を設計できるようにしています。開発者は独自のコードでインターフェースと会話ロジックを定義し、自社のバックエンドに直接接続できるため、既存顧客のログインや有料プランも利用可能ですai-market.jp。SDKはオープンソースとして提供され、採用する環境であればどこでも動作します。
モデルがアプリと「会話」する仕組みも特徴です。ユーザーのメッセージがアプリに送られ、アプリから返されたデータをGPTモデルが解析して回答を生成するため、チャット内でデータを横断的に利用できます。さらに「インライン表示」「全画面表示」「ピクチャーインピクチャー」といった複数の表示モードが用意され、地図や動画を見ながら会話を続けられます。
安全性とプライバシー
OpenAIは、アプリの安全性とプライバシーを重視しています。すべてのアプリはOpenAIの使用ポリシーに従い、全年齢層に適した内容でなければならず、パートナーの利用規約も順守する必要がありますp。開発者は明確なプライバシーポリシーを提示し、必要最小限のデータのみを収集して透明性を確保する義務があります。初回利用時にはユーザーにデータ共有の承認を求める画面が表示され、今後はアプリが利用できるデータカテゴリを細かく設定できるようになる予定です。
これらの基準を満たさないアプリは削除される可能性があり、開発者はサポート連絡先の提供やアプリの安定運用も求められます。また、OpenAIは後日提供予定の「Agentic Commerce Protocol」により、チャット内での支払い機能も標準化し、購入処理がシームレスに行えるようにする方針です。
日本での利用状況と注意点
SHIFT AIの解説によれば、初期パートナー7社のうち、日本国内で問題なく使えるのはBooking.com、Figma、Courseraなど一部に限られます。ExpediaやZillowはサービス提供地域の関係で利用できず、CanvaやSpotifyはブラウザやデバイスの言語を英語にしないと動作しない場合があります。また、チャット履歴を一時的に保存しない「一時チャット」モードではアプリ機能が使えないため、通常モードで利用する必要があります。
今後の展望
OpenAIは今年後半にアプリの審査受け付けと公開用ディレクトリを開設し、開発者がアプリを収益化できるようにする計画です。また、Business、Enterprise、Eduプランへの対応やEU地域での提供、さらなるパートナー拡大も予定されています。8億人以上のユーザーベースを持つChatGPTにアプリを提供できることは、開発者にとって大きなビジネスチャンスであり、会話AIがOSのような役割を担う未来が現実味を帯びてきました。
まとめ
Apps in ChatGPTは、チャット内でのタスク遂行を大幅に拡張する機能です。ユーザーは会話の流れでアプリを呼び出し、旅行予約から学習、デザイン作成、音楽鑑賞、家探しまで幅広いサービスをシームレスに利用できます。また、Apps SDKにより開発者は独自のアプリを作成し、8億人超のユーザーにリーチすることが可能となりました。安全性やプライバシーの確保が重要テーマであり、OpenAIは厳格なガイドラインを公開しています。
欧州連合を含む一部地域では未提供ながら、今後多くのパートナーや機能が追加される予定であり、チャットベースのアプリプラットフォームとしてのChatGPTの存在感はますます高まるでしょう。

